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オンラインピアノレッスン開始・私のホームオフィス風景(追記あり)

Online Piano Lesson @ My Home Office
Online Piano Lesson @ My Home Office

ロックダウン下のドイツでの生活も一ヶ月半が過ぎ、「新たな日常」の輪郭が徐々に形どられてきています。3月から休校中の音楽学校に加え、今学期の音楽大学の授業も全て遠隔で行われることになり、オンラインレッスンの時代が本格的に幕開けました。

 

私はこれまでにもスカイプ等のビデオ通話機能を使い、他国に住む音楽仲間と演奏を聴き合いコメントし合うという、「オンライン弾き合い会」をひっそりと継続してきました。そのためネットを介して音楽をライブでやりとりすること自体にはあまり抵抗がなかったのですが、レッスンとなるとどうなるのか?と未知の部分が多々あり、踏み出すに至りませんでした。しかし、このコロナ危機で状況も一変。もはや他に選択肢はなく、お尻に火をつけられた状態になりました。

 

友人や同僚にアドバイスをいただきながら手探りで始めたインターネット上でのピアノ個人レッスン。開始から数週間が経ち、技術的にも慣れ、手応えも感じているので、ここで少しその方法と私のホームオフィス風景をご紹介したいと思います。

 

【2020/05/01 追加更新】

現在行っているのはマンツーマンのリアルタイムでのレッスンのみですが、過去に経験がある「動画(または音源)を提出していただきアドバイスする」という添削スタイルのレッスンについても追記します。また、最近行った「オンライン発表会」も番外編としてお伝えします。

1.リアルタイムでのオンラインレッスン

ものは試しだ、ということで、私もドイツの教育機関が勧めるソフトウェア「Zoom(ズーム)」を恐る恐るインストール、先人たちの手助けのもと数回のテストをし、実用するに至ります。この「新しいソフトウェアをパソコンにインストールする→使い方を学ぶ」という作業がやはり一番億劫で面倒な過程だと思うのですが、ここさえクリアできたら、あとは使っていくうちに慣れます。まさに「Learning by Doing (ラーニング バイ ドゥーイング=行動することによって学ぶ)」。

 

オンラインレッスンは、講師と生徒両方がスマートフォンを持っていれば、パソコンがなくても可能です。「Zoom」は、一方(講師)がアカウントを持っていれば相手(生徒)が新たにアカウントを作成する必要はなく、アプリをインストールするだけで良いのでスムーズに始めることができます。

より良い音質を求めれば求めるほど講師、生徒側ともに高価な機材が必要にはなってきますが、通常のレッスンが再開できるまでの短い期間に行うなら、スマホで始められるのは気軽でコストもかからず良いですね。

Eri Mantani's Set up for Online Piano Lesson

私は上の写真のようにパソコンに外付けのマイクをUSBケーブルで繋げ、スタンドライトを三脚代りにしてセット。そしてさらに外付けのスピーカーを二つ接続しています(スピーカーはピアノの下に置いているので写真には写っていませんが、イラストをご参照ください)。マイクはXYステレオマイクを搭載したハンディレコーダーを使っています。小ぶりな設備ですが、パソコンの内蔵マイクやスピーカーに比べると音は断然良くなりますし、ちょっとした自宅スタジオが構築されたように感じます。ただ、勢いに乗って外付けマイク等にこだわり出すと恐ろしいことが起こりますので、とりあえずこれで十分と自分に言い聞かせます。

 

生徒の中には一部、「Zoom」をインストールしても作動しないという人がいて、その場合はスカイプやアップル製品に標準搭載の「FaceTime」を代用して対応しています。日本での LINE に相当する欧州のコミュニケーションツール「WhatsApp」は電話番号さえ知っていれば相手とメッセージ送信、音声・ビデオ通話までできて便利なのですが、パソコン版ではビデオ通話ができないので、レッスンにはあまりお勧めできません。

 

現在通学することが叶わない生徒たちは、オンラインでの限られた時間帯に普段以上の集中力を見せてくれています。

が、生徒の弾きたい気持ちがはやってしまうと、講師の言葉を最後まで聞き終わらないまま演奏に入ってしまうこともしばしば。そうなると普段のレッスンではすぐに中断させられるところが、画面越しだととても難しくなります。円滑なやりとりを可能にするために、オンラインレッスンでは「相手が話し終わるまで自分は弾き始めない」というのが鉄則です。「聴き合う」ことの重要さを身をもって学べるのも、オンラインレッスンの副産物かもしれません。

2. 動画・音源にアドバイスする添削型オンラインレッスン

私は一時期、ピティナ(一般社団法人全日本ピアノ指導者協会)が提供する「POST -PTNA Online Second Teacher- ピティナ・オンライン・セカンドティーチャー」の講師をつとめていました(このサービスは現在は停止されています)。これは生徒が動画をYouTubeにアップロード(限定公開)し、講師が曲の各所にコメントを付けていくという「添削」がメインのお仕事でした。

 

これに似た方法は、今後もリアルタイムレッスンと並行して行うことができると考えています。記録された媒体の送信やアップロードには、曲の長さやインターネット環境により時間がかかることがあるかと思いますが、何よりも生徒、講師ともに自分の都合の良い時に作業することができますし、動画/音源、コメントという「形」として記録に残ることが、学習過程の確認、ステップアップにも役立ちます。また、ビデオ通話よりもベターな音質、画質が期待できます。

3. 番外編「オンライン発表会」

ちなみに私は最近、「オンライン発表会」を行いました。新型コロナウイルスの急激な感染拡大に対処するためドイツ政府が本格的に対策を打ち出した日の、翌日に予定していた音楽学校の発表会が急遽中止になったためです。 あまりに突然のことだったため、みんなショックだったのですが、たまたまその時に連絡を取り合っていたドイツの恩師に半ば愚痴気味にそれを伝えると、この「オンライン発表会」のヒントを与えてくださったのです(恩師に感謝!)。

 

そして私が提案した発表会は、生徒それぞれが自宅で収録した動画/音源を、もともと予定していた発表会の日時に、グループチャットに投稿して鑑賞し合う、というものでした。 このためだけの専用のグループチャットを「WhatsApp」で作り、生徒や親御さんをメンバーに招待。「うっかり忘れ」を防ぐために開始時刻前に何度かお知らせを送り、パソコンを開いて待機していました。

 

するとまあ、「開演」と同時に動画/音源の嵐!! 参加者がみんな、今か今かと待機していたのが分かります。投稿された動画/音源を順番に再生し、そのクオリティの高さに驚きながら、一人ずつ生徒に向けてコメントを添えていきました。 思わぬ学長の飛び入り参加(演奏動画)もあり、沸きまくるチャット内。長い自宅待機期間のスタートが、音楽に彩られた瞬間でした。

 

 

以上、簡単ですが私の一例をご紹介しました。

 

何もかもオンラインにすれば良いとは思いませんが、レッスンが継続できなくなること、練習していた曲を発表する場が失われることによって受けるダメージを考えれば、こうして違う形での機会を提供することは、検討に値すると思います。もちろん、技術的に難しい場合もありますし、インターネット上のセキュリティが気になるという心配も払拭できませんので、あくまで指導者、生徒それぞれがしっかり相談した上で、実施が可能になればと思います。

 

オンラインレッスンに関してはまだまだ初心者ですが、今後は日本にお住まいの方にもドイツから提供させていただくことも可能になるかと考えていますので、日々ラーニング バイ ドゥーイング、これから研究を重ねていきたいと思います。レッスンにご興味のある方はどうぞこちらからご連絡ください。経験豊富な方々からのアドバイス等もお待ちしております。

 

今日から5月。元気に過ごしましょう!

 

萬谷衣里