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「レコード芸術」、「音楽現代」両誌にCD評が掲載されました

 

「レコード芸術」2017年2月号より

東京芸大大学院を修了後ドイツに留学し、国家演奏家資格を取得した萬谷衣里によるスカルラッティのソナタ集。残念ながら私はその実演を聴いたことがなかったが、このCDを聴いて驚いた。その透明感に満ちた音色と切れ味の良いリズム感から生み出される生命力に満ちた音楽の素晴らしさや、何よりも音楽の内実や本質を的確につかみ取るセンスの良さにである。その音楽は、短い中に比類のないミクロコスモスが形成されており、それを過不足なく実現しようと思えば、指が回るとか音が美しいだけではとても済まされない難しさがある。そこに込められた瞬間的な美を的確に表現する鋭い感性と、その美を短い時間の中に封じ込める構築力が不可欠だが、彼女にはそれがある。非常に可能性を感じさせるピアニストの登場である。 (中村孝義 海外盤REVIEW)

「音楽現代」2017年3月号より

ドイツを拠点に演奏活動を展開しているピアノの萬谷衣里がD.スカルラッティのソナタ集を録音したが、きわめて魅力的な内容に仕上がっている。500曲以上もあるソナタの中から選曲して1枚のディスクにまとめるには、奏者の考え方というかセンスが見て取れるが、萬谷の選んだ19曲は有名曲も少しはあるが、多くはそれほど頻繁に聴かれるものではないが、実に様々な曲想の変化に富んだ曲でまとめられ、それをまさにセンス良く配置している。そして何より演奏が輝いているところが印象的。生き生きと弾むリズム感や自在な緩急具合などを駆使してスカルラッティのソナタの多彩さと魅力を存分に伝えている。(福本健)